食事&栄養補給

特定の食材に偏るよりも
バランスが大切。
減塩・減糖質は今日からでも。

なぜ食事&栄養補給が対策になるの?

「認知症予防に〇〇が効果的」といった宣伝文句をよくみかけますが、未だ科学的に明確な証拠が示されているものがないのが現状です。ただ、糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病は認知症と強く関連します。認知症予防に、食生活を見直しましょう。

糖尿病が認知症のリスクになります。

男女ともに高齢になるほど、糖尿病の割合は増えており、平成29年度の国民健康・栄養調査では、「糖尿病が強く疑われる者」の割合が70歳以上の男性の25.7%、女性の19.8%にものぼります。そして、糖尿病の高齢者はそうでない高齢者に比べて、認知症になる割合が約2倍にもなります。糖尿病の期間が長いほど認知症にかかるリスクが高いこともわかっています。糖尿病の原因は、ストレスや運動不足もありますが、脂質や糖質の高い食事が強く影響します。

高血圧・高脂血症が脳血管性認知症のリスクを高めます。

九州大学が50年間以上に渡って実施している「久山町研究」という生活習慣病の疫学調査があります。長年の研究によって、高血圧の人は正常血圧の人に比べて脳血管性認知症の発症頻度が、4.5倍~10倍もあることがわかりました (Ninomiya T,Hypertension,2011)。また、高脂血症(脂質異常症)についても、正常値以上の中性脂肪やコレステロールにより、血液がドロドロになり、頸動脈にプラークと呼ばれる壁在血栓を形成し、脳梗塞の原因となります。高脂血症などを起因とする動脈硬化は、認知症を引き起こすリスクを高めると考えられています。

具体的に何をすればいいの?

“地中海料理”+“ダッシュ食”の組み合わせ「マインド食」

認知症と食習慣の研究として、アメリカのラッシュ大学メディカルセンターの研究グループが2015年に発表した研究結果に「『マインド食』がアルツハイマー型認知症を予防する効果が高い」というものがあります。日本人にもイタリア料理として馴染み深い「地中海料理」はオリーブオイル、ナッツ類、果物や魚介類を積極的にとる食事です。ダッシュ食は、高血圧を防ぐ食事の略語で、脂肪やコレステロールを控え、ミネラルを増やすことで、高血圧の予防と改善に効果があるとされる食事法です。これらをあわせた「マインド食」は、脳の健康を保つために積極的に取ると良い食材10項目と控えたい5項目をリストアップしており、日々の食事に取り入れやすくなっています。
★積極的に取りたいオススメ食材
・緑黄色野菜(キャベツ・レタス・ほうれん草・ニンジン・ブロッコリー等)
・その他の野菜(ごぼう・大根・玉ねぎなど)
・ナッツ類(無塩のミックスナッツなどがオススメ)
・ベリー類(ブルーベリー・ラズベリーなど、抗酸化作用のあるアントシアニンが含まれている)
・豆類(大豆・ひよこ豆など)
・全粒穀物(玄米や全粒粉のパンなど)
・魚(特にイワシ・サバなどの青魚)
・鶏肉(高蛋白・低脂質のムネ肉・ささみなどがオススメ)
・オリーブオイル(オレイン酸・ポリフェノールが豊富)
・ワイン(酒類で唯一のオススメ、ポリフェノールが豊富)
★避けたい5つの食材
・チーズ類
・バターやマーガリンなど
※ただし、久山町研究では、日本人は乳製品を多く摂った方が認知症になりにくいと報告されています。そこには、元々が日本人は欧米人に比べて乳製品の摂取量が半分くらいである、という背景があります。・お菓子(糖分が脂肪分が多いケーキ等)
・ファストフード
・脂肪の多い牛肉・豚肉

60歳代は塩分摂取量が最も高い!?

日本人の食塩摂取量は世界的に見ても高く、厚生労働省は18歳以上の男性は1日あたり8.0グラム、女性は1日7.0グラム未満という目標を定めています。ちなみに世界保健機関(WHO)の定める食塩摂取目標は5グラム。ですが、平成29年度の国民健康・栄養調査では、男性平均10.8グラム、女性9.1グラムとなっており、さらに、20歳代が最も少なく、60歳代が最も高い、という結果がでています。塩分のとりすぎは高血圧を招きます。出汁や酸味で味を補うことで、減塩を心がけましょう。また、久山町研究では、白米やアルコールの摂取量を少なくした食事に、認知症予防の可能性があることがわかっています。
減塩醤油や減塩みそなどの調味料を積極的に活用し、出汁を効かせた料理を工夫する、玄米食を取り入れるなど、定食屋ではごはん少な目とオーダーする、など、今日から少しずつでも始めてみましょう。